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2021.08.05 (木)

「 五輪開催は成功だ、皆喜んでいる 」

『週刊新潮』 2021年8月5日号
日本ルネッサンス 第961回

7月23日金曜日、「東京2020」五輪が始まった。武漢ウイルス禍の中で本当にいろいろあったが、よくここまで辿り着いた。よかった、の一言である。

私は毎週金曜日の夜9時に生配信している「言論テレビ」で、西岡力氏と洪熒氏をゲストに、きっちり1時間、朝鮮半島情勢を伝えて、途中から開会式を見た。素直に感動した。

第一、選手の皆さんの表情が何ともいえないほどよかった。マスクはしていたが、どの選手もどの人も喜びを体全体で表し、目が笑っていた。マスクの下では大きな笑みがこぼれていたことだろう。五輪中止を叫んだ人たちに、こんなに晴々とした選手たちの様子を見てほしいと心から思ったものだ。
 
視聴率調査会社のビデオリサーチによると、約4時間にわたった東京五輪開会式の視聴率は56.4%、実に多くの人が見たのだ。

開会式には日本の文化文明の穏やかさと、物みな全てに対する日本人の優しさが詰まっていた。決して派手ではない澄んだ輝きが胸に沁み込み、不思議な落ちついた気持ちにしてくれた。

空に浮かんだ市松模様のエンブレムが静謐な光を放ちながら、形を変えて次第に地球になっていく。なんと美しい地球生成か。

市松模様の一片一片が浮遊し、位置を変え、新たな形を作っていくその動きは1824機のドローンで表現したそうだ。こんなに繊細で雅な動きをドローンを駆使して表現できる技術力の冴え。そこで表現されたのは人工的に創造したものというより、まるで群れをなす蛍のように、自然に生まれ出た光が自分の意思で群れ合って、和の心でひとつの世界を創ったという感じだった。

豊かな緑の森と澄んだ水に恵まれている日本の自然そのもののように、そこに存在し、息づき、命をつないでいく美しい日本と美しい地球を表現しているのではないだろうか。この光の地球の映像に、何千万人、何億人という人々が、世界各国の町や村で釘づけになっていたはずだ。

そして聖火台の美しさは何と表現すればよいのだろうか。大坂なおみさんが聖火を掲げて富士山を上ると、その頂上に魂が吸い込まれるような雅で研ぎ澄まされた聖火台が出現した。こんなに美しい聖火台はこの世に二つとないだろう。

聖火台の炎は、福島県浪江町から運んできた水素による炎だそうだ。この水素を製造した福島水素エネルギー研究フィールドを、私は過日訪ねたばかりだった。福島で故郷の復興に力を尽くしているハッピーロードネットの西本由美子さんはこう語る。

「このオリンピックは復興五輪。そのことを私たち福島の住人はとても大事に思っています。浪江町の水素や福島のトルコ桔梗が聖火やブーケの形で五輪に登場しています。うれしい気持ちです」

挨拶は長すぎた

夜中近くになって、五輪組織委員会の橋本聖子会長や国際五輪委員会のバッハ会長が挨拶をした。橋本さんはあの混乱の中で会長を引き継ぎよくやった。けれど挨拶は長すぎた。バッハ氏の話も長すぎた。

一方、天皇陛下の開会のお言葉は短く、あっという間に終わった。開会宣言とはそういうものであろうから致し方ないとしても、陛下の御紹介はもっときちんとして差し上げるべきだ。

天皇陛下はまだワクチン接種を一度しか受けておられない。ご臨席をお願いするのであれば、政府として二度の接種をお願いし、当日までに済ませていただけるよう手配すべきだった。皇室への姿勢にはもう少し敬意と配慮が払われて然るべきだ。

さて翌日から種々の競技や試合が始まった。原稿を書いていても、つい見てしまう。それにしても阿部家の詩さんと一二三さんの仲よし兄妹の活躍は凄かった。二人で一緒に金を取るなんて、あり得ないことが起きてしまった! おまけに、詩さんも一二三さんもご挨拶がすばらしい。

「このオリンピックを開催していただいて、金メダルを取ることができた」

金メダルのようにキラキラと光る汗を額や首筋にしたたらせながら、きちんとした言葉遣いで詩さんは言った。「お兄ちゃん」もさわやかだ。

日曜日に戻りたい。各紙が柔道男子60キロ級の高藤直寿選手の金メダルを一面で大きく伝える中、朝日新聞だけが体操の王者、内村航平選手の落下を一面トップにもってきた。朝日らしい。

この日私は、新潮社から出版予定の単行本のゲラをチェックする合間に、言論テレビの放送で見られなかった開会式の前半を見ることにしたのである。すると姪の慶が言った。

「開会式の音楽がすぎやま(こういち)さんのドラクエだったの。聞いた途端に全身に電気が走ったみたいで、泣きそうになった」

彼女は大のすぎやまさんファンでドラクエの子なのである。秘書の鈴木麻也も言う。

「これだ!って思いました。日本人全員が感激の涙、涙ですよ」

すぎやまさんに電話

なのに、NHKは曲の紹介ですぎやまさんのお名前も、ドラクエだということも言わないといって、二人は不満そうだった。しかし、言わなくても皆がすぐにわかるので大丈夫ということにもなった。

私はすぐにすぎやまさんに電話した。すぎやまさんの所には、明らかに多くの人から連絡があったようで、お元気そうな声で、「ありがとう!」と返ってきた。ドラクエの生みの親は、真に日本のアイドルなのである。

この五輪から私たちが学べることの第一は、平凡かもしれないが前向きに考えることの大切さだという気がする。五輪開催に反対する朝日新聞や毎日新聞、各テレビ局のワイドショーのコメンテーターはおよそ全てについて、足りないところ、不完全なところを探し回る。あげつらう。斜に構えて批判する。

だが、物事を決めて、目標に向かって進む人々は文句を言わずにひたすら努力する。五輪開催が決定したときから、多くの人々が誰も見ていなくても凄まじい努力を重ねて、五輪を成功させようと歩んできた。大会に寄せる日本と世界の期待に応えようとしてきた。それがこんなにすばらしい大会につながった。

武漢ウイルスに世界が振り回され、日本も大変な状況だが、それでも日本はよく制御している。河野太郎氏の稚拙な手法ゆえに遅れがちではあるが、ワクチンの普及も進んでいる。そうした中で、日本が五輪をきちんとやり遂げることがどれだけこれからの日本にとって励みとなることか。多くの人々、国々にとっても同じである。困難に打ち克ってやってみせる。その気持ちを持つことの大切さを学んで、それを私たちのメダルとしたい。

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